2026.07.13

佐賀県有田町 有田焼の代表技法|染付・色絵・金襴手の違いを解説

はじめに

有田焼には、染付・色絵・金襴手という3つの代表技法があります。

結論から言うと、違いはシンプルです。 染付は藍色一色、色絵は複数の色を使った絵付け、金襴手は色絵に金彩を重ねた豪華な様式です。

佐賀県有田町(ありたちょう)は、日本で最初に磁器がつくられた地とされ、今も窯元が軒を連ねるやきものの町です。 この記事では、有田焼の代表技法である染付・色絵・金襴手の違いを、歴史的な背景とあわせてやさしく解説します。

技法の成り立ちを知ると、器を見る楽しみが一段と深まります。

有田焼の技法を知る前に|佐賀県有田町とやきものの歴史

有田焼は、佐賀県有田町を中心につくられてきた磁器です。

有田焼の起源については、朝鮮半島出身の陶工・李参平(りさんぺい)が有田・泉山(いずみやま)で磁器の原料となる陶石を発見し、元和2年(1616年)ごろに日本で初めて磁器を焼いたとする伝承が広く知られています。 佐賀県の資料でも「平成28年(2016年)の日本磁器誕生・有田焼創業400年」と記されており、これが有田焼の始まりとする通説の根拠になっています。 ただし、この1616年という年代は後年にまとめられた伝承としての性格が強く、陶石の発見自体は慶長14年(1609年)ごろとする説もあるなど、正確な年代には諸説がある点に注意が必要です。

有田焼は1977年(昭和52年)、国の「伝統的工芸品」に「伊万里・有田焼」として指定されました。 指定を受けた産地では、佐賀県陶磁器工業協同組合を中心に、後継者育成や需要開拓などの振興事業が続けられています。

初期伊万里に見る染付の原点

磁器づくりが始まった1610年代から1650年頃までの製品は、「初期伊万里」と呼ばれています。

青みを帯びた白地に、呉須(ごす)と呼ばれる藍色の絵の具だけで草花や鳥などを描いた、素朴な染付が特徴です。 この染付こそが、有田焼のもっとも古い技法にあたります。

染付とは|呉須の藍色一色で表現する有田焼の基本技法

染付(そめつけ)は、焼く前の生地に呉須で絵柄を描き、その上から透明な釉薬をかけて高温で焼き上げる技法です。

これは「下絵付け」と呼ばれる方法で、絵の具の上に釉薬が乗るため、絵柄が滲みにくく、丈夫に仕上がります。 色は藍色一色ですが、線の太さや濃淡によって、豊かな表現が可能です。

染付が今も愛される理由

染付は有田焼の中でもっとも古くから作られてきた、いわば基本の技法です。

シンプルで飽きのこない見た目から、現在も日常づかいの食器として人気があります。 落ち着いた雰囲気を好む方には、まず染付の器から手に取ってみることをおすすめします。

色絵とは|白磁に彩りを重ねる上絵付けの技法

色絵(いろえ)は、一度本焼きした白磁の表面に、赤・緑・黄・紫などの絵の具で絵柄を描き、低い温度でもう一度焼き付ける技法です。

染付が「下絵付け」であるのに対し、色絵は「上絵付け」に分類されます。 色絵の技法は、初代酒井田柿右衛門(喜三右衛門)が正保3~4年(1646~47年)ごろに赤絵の焼成に成功したという伝承が元になったとされています。 一方、後述する柿右衛門様式が余白を生かした様式として確立したのは1670年代頃という説が有力です。 文献によって年代の記載に幅があるため、詳細な年代は諸説ある点に留意してください。

柿右衛門様式に見る色絵の美しさ

柿右衛門様式は、乳白色の素地「濁手(にごしで)」に、余白を活かした構図で色絵を施した様式です。

赤を中心に黄・緑・青・紫・金などを使い、左右非対称の絵画的な構図で花鳥などを描くのが特徴です。 この濁手の製作技術は1971年に国の重要無形文化財に指定され、現在は柿右衛門製陶技術保存会が保持団体として技を受け継いでいます。 また、14代酒井田柿右衛門氏は2001年、重要無形文化財「色絵磁器」の保持者(人間国宝)に認定されました。

色鍋島にみるもう一つの色絵

色絵には、柿右衛門様式のほかに「色鍋島(いろなべしま)」と呼ばれる様式もあります。

色鍋島は、佐賀藩の鍋島家が将軍家などへの献上品として作らせた特別な色絵磁器です。 規則正しい器形と意匠、気品のある作風が特徴で、今泉今右衛門家が代々その技術を継承しています。 現在は14代今泉今右衛門氏が2014年、重要無形文化財「色絵磁器」の保持者(人間国宝)に認定されています。

金襴手とは|染付と色絵に金を重ねる豪華な様式

金襴手(きんらんで)は、色絵の技法に金彩を加え、器の表面を華やかな文様で埋め尽くすように仕上げる様式です。

江戸時代の元禄年間(1688年~1704年)に現れたとされ、濃い染付の藍色の地に、赤と金をふんだんに使った文様を重ねていきます。 装飾の密度が高く、祝いの席にふさわしい豪華な印象を与えるのが特徴です。

金襴手と古伊万里様式のつながり

金襴手は、「古伊万里様式」と呼ばれる様式の代表的な装飾のひとつです。

古伊万里様式は元禄年間に発祥したとされ、濃い染付と金襴手を組み合わせた豪華な意匠が特徴です。 江戸時代には海外へも輸出され、ヨーロッパの磁器づくりにも影響を与えたと伝えられています。

染付・色絵・金襴手の違いを一覧で比較

3つの技法の違いを、簡単な表にまとめました。

技法絵付けの方法代表的な様式
染付下絵付け(焼く前に絵付け)藍色一色初期伊万里
色絵上絵付け(本焼き後に絵付け)赤・緑・黄・紫など多色柿右衛門様式・色鍋島
金襴手上絵付け+金彩染付の藍+赤・金古伊万里様式

佐賀県有田町で技法の違いを体感する方法|観光・体験・購入

技法の違いを知ったら、実際に有田町で器を見比べてみるのもおすすめです。

佐賀県立九州陶磁文化館(佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1、電話:0955-43-3681)では、常設展を無料で見学でき、柿右衛門様式や色鍋島などの名品にじっくり触れられます。 開館時間は9時から17時(入館は16時30分まで)で、月曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始(12月29日~1月3日)は休館です。

町内の窯元では、絵付け体験やろくろ体験ができる工房もあり、技法の違いを手を動かしながら学べます。 また、有田町内には窯元直営店や卸団地の店舗が多く並び、実際に器を手に取って選ぶことができます。

遠方の方は、有田町のふるさと納税制度を通じて、有田焼の器を返礼品として受け取ることも可能です。 返礼品についての問い合わせ先は、有田町ふるさと納税サポートセンター(電話:0955-29-8322、平日9時~17時)です。

まとめ|有田焼の代表技法「染付・色絵・金襴手」の違いを楽しむ

有田焼の代表技法である染付・色絵・金襴手には、それぞれ異なる歴史と工程があります。

染付は藍色一色の下絵付け、色絵は多色を使う上絵付け、金襴手は色絵に金彩を重ねた豪華な様式です。 この違いを知っておくと、窯元や美術館で器を見るときに、時代背景や職人の工夫まで感じ取れるようになります。

有田焼の代表技法である染付・色絵・金襴手の違いを知ったうえで、佐賀県立九州陶磁文化館で名品を眺めたり、窯元の絵付け体験に参加したり、卸団地やオンラインショップ、ふるさと納税で気に入った一枚を迎えてみてはいかがでしょうか。


よくある質問

Q1.染付と色絵の一番の違いは何ですか? A.絵付けのタイミングです。染付は焼く前に絵付けする「下絵付け」、色絵は本焼き後に絵付けする「上絵付け」という違いがあります。

Q2.金襴手は色絵と同じものですか?。 A.金襴手は色絵の一種です。色絵の技法に金彩を加え、より豪華な装飾を施したものを指します。

Q3.柿右衛門様式と色鍋島はどう違いますか? A.どちらも色絵の様式ですが、柿右衛門様式は余白を生かした絵画的な構図、色鍋島は鍋島藩の献上品として作られた、規則正しい意匠が特徴です。

Q4.有田焼の技法の違いはどこで見て確認できますか? A.佐賀県立九州陶磁文化館の常設展(無料)で、各様式の実物を見比べることができます。

Q5.有田焼はいつから伝統的工芸品に指定されていますか? A.1977年(昭和52年)に、国の伝統的工芸品として「伊万里・有田焼」の名称で指定されました。

Q6.色絵磁器の人間国宝は誰ですか? A.柿右衛門様式では14代酒井田柿右衛門氏(2001年認定)、色鍋島では14代今泉今右衛門氏(2014年認定)が、それぞれ重要無形文化財「色絵磁器」の保持者に認定されています。


重要ポイント

  • 染付は下絵付けによる藍色一色の技法で、有田焼のもっとも古い様式
  • 色絵は本焼き後に多色で絵付けする上絵付けの技法
  • 金襴手は色絵に金彩を加えた、より豪華な装飾様式
  • 柿右衛門様式の濁手技法は1971年に国の重要無形文化財に指定されている
  • 色絵磁器の人間国宝は、柿右衛門様式が14代酒井田柿右衛門氏(2001年認定)、色鍋島が14代今泉今右衛門氏(2014年認定)
  • 有田焼は1977年に国の伝統的工芸品(伊万里・有田焼)に指定された

注意点

  • 有田焼の創業年や様式の確立年は史料によって解釈が分かれるため、断定的な年号として覚えすぎないよう注意する
  • 柿右衛門様式・色鍋島など、窯元や作家によって同じ「色絵」でも表現の幅が大きい
  • 施設の営業時間や休館日、返礼品の内容は変更されることがあるため、訪問や申し込みの前に公式情報を確認する
  • 陶磁器は割れ物のため、持ち帰りや発送の際は取り扱いに注意する

ひとこと

染付・色絵・金襴手の違いを知ったら、佐賀県立九州陶磁文化館での鑑賞や窯元での体験、卸団地やふるさと納税での購入を通じて、実際に有田焼の器に触れてみてください。

参考文献一覧

  • 有田観光協会 ありたさんぽ「有田焼とは」(https://www.arita.jp/aritaware/)
  • ARITA EPISODE 2「古伊万里、柿右衛門、色鍋島――有田焼の様式美」(http://arita-episode2.jp/ja/history/history_8.html)
  • ARITA EPISODE 2「1646年――赤絵付けの成功」(http://arita-episode2.jp/ja/history/history_5.html)※初代柿右衛門の赤絵完成年を直接確認
  • 一般財団法人柿右衛門財団「柿右衛門とその歴史」(https://kakiemon.or.jp/kakiemon/history.html)
  • 佐賀県「第2部 佐賀県の商工業 伝統的工芸品」(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00352120/3_52120_137494_up_ibxi2v5v.pdf)※伝統的工芸品指定年を直接確認
  • 文化庁 日本遺産ポータルサイト「柿右衛門(濁手)」(https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/2550/)
  • 日本工芸会「人間国宝 十四代 今泉今右衛門」(https://www.nihonkogeikai.or.jp/waza/artist/44/)※14代今右衛門の人間国宝認定年を直接確認
  • 佐賀県立九州陶磁文化館 公式サイト(https://saga-museum.jp/ceramic/)※所在地・電話番号・観覧料・開館時間・休館日を直接確認
  • 佐賀県有田町 ふるさと納税特設サイト「有田焼」(https://furusato-arita.com/aritayaki/)※問い合わせ先を直接確認
  • 有田観光協会 ありたさんぽ「泉山磁石場」(https://www.arita.jp/spot/post_16.html)※李参平・泉山磁石場に関する伝承を確認

取材・調査時点の情報:2026年7月13日現在

筆者:

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